我が家の猫・ソムタムは、過去に一度、家から脱走したことがある。今思い返しても胃の奥がぎゅっと縮むような、長くてしんどい時間だった。
「迷い猫は最初の1週間以内に見つかる確率が30〜40%、1ヶ月を過ぎると10%以下」
この数字が示す通り、猫探しは本当に厳しい。でもソムタムが見つかったのは、そんな状況をひっくり返す“2ヶ月後”というタイミングだった。
■ 失踪後の1ヶ月は闇雲な捜索の連続
ソムタムが姿を消した直後、私は毎日、夜と夜明け前に近所を歩き回って探した。猫が動くのは薄暗い時間帯が多いと聞いたからだ。しかし、どれだけ探してもその姿は見えない。
家の近所を半径数百メートルほど歩いただけで、普段意識していない細い路地や用水路、小さな隙間が無数にあることに気づく。車の下も端から端まで覗き込んだが、改めて見ると、あまりにも台数が多い。すべてをチェックしようとすると、とんでもない時間がかかる。
ほんの数百メートルの範囲ですら、猫が隠れられる場所はありすぎる。
猫を探すとは、砂の中から金を探すような、とんでもなく途方のない作業なんだと痛感した。
1ヶ月が経つ頃には、気持ちは完全に折れかけていた。探しても探しても何の手がかりもない。SNSで呼びかけても情報はゼロ。
寂しさに負けて、とうとう新しく1匹お迎えしてしまったほどだ。(ほんとソムタム、ごめん…)
■ ソムタムは“すぐ近く”にいた
そんな半ば諦めムードが漂っていた頃、衝撃的な事実が判明する。
ソムタムが見つかったのは、なんと家からわずか数百メートル先の“隣の丁”。
つまり、ほぼ近所。
近くには野良猫を餌付けしている人がいて、どうやらソムタムはその周辺で外生活をしながら生き延びていたらしい。
遠くへ旅に出たわけでも、どこかの町に迷い込んだわけでもない。本当にすぐ側にいた。
その事実に驚きつつも、どこかほっとした。見つけられなかった悔しさよりも、ただただ「生きていた」という事実のほうが強かった。
■ 捜索で一番効果があったのは「ポスティング」と「声かけ」
迷い猫探しの方法は色々ある。
深夜の捜索、エサの設置、SNSでの拡散、見守りカメラ…どれも大事だが、一番効いたのはチラシ(ポスティング)だった。
一軒一軒ポストに入れる、地味で時間のかかるやり方だが、結局これが最強だった。
さらに、近所で犬や猫を散歩させている人に、直接チラシを手渡して回った。散歩の人は常に外を見ているので、猫の姿を見つけやすい。
そしてその戦略が、ソムタム発見の決定打になった。
ある日、よく猫を散歩させている女性から電話が届く。
「ソムタムくんに似た猫が目の前にいるよ」
声は落ち着いていたが、俺の心臓はバクバクだった。
現場に急いで向かい、そこにいたのは間違いなくソムタム。
2ヶ月ぶりの再会だった。
あの瞬間の空気、呼吸、ソムタムの体温、すべてが今でも鮮明に残っている。毛はゴワゴワしていて、爪はかなり伸びて鋭くなっていた。
■ 迷い猫探しで大切なのは「諦めないこと」
今回の出来事で痛感したのは、迷い猫は意外と遠くへ行かないということ。
そして、見つけるまでに時間がかかる場合も多いということ。
・ポスティング
・近隣住民への声かけ
・散歩中の人との情報共有
この3つはとくに効果が高い。SNSよりも、ネットよりも、結局は“人の目”がいちばん強いと感じた。
確率は10%以下と言われても、ゼロじゃない。ソムタムはその10%以下の奇跡側にいた。
もし今、迷い猫のことで苦しんでいる人がいたら、この記事が少しでも希望になればと思う。
「近くにいるかもしれない」
「まだ生きているかもしれない」
その可能性は想像以上に高い。
今のソムタムは、脱走前より甘えん坊になり、家の中で平和に暮らしている。
帰ってきてくれて、本当にありがとう。


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